ふたりTAKA全国大会日記


《大会前日 鈴鹿に向かって出発》

場所は福山駅前。
11時過ぎの街は通勤の混雑も終わり、開店を迎えた店舗があわただしく片付け物をしている。



「俺ってなんでここにいるんだろうな」
ふっとおかしくなってくる。



6月に長期出張という名の単身赴任を言い渡され 知らない土地にやってきた。
それからすでに2ヶ月を過ぎたが、 土日はすべて特練やその準備で埋め尽くされたため、福山の町はまったくわからない。

正直、今回の移動が決まったときは一度は全国大会を諦めた。
が、再度奮起し、辛いながらも特錬を休むことなく参加し、全国に行くこととなった。



今回はいままでとは違う特別な大会だ。

一つは私にとって5回目、最後の大会であるということ。
もう一つは練習での仕上がりがいままでになく順調であること。
しかし、今回の一番は何といっても息子との同時出場だ。
私は5回目の参加なので、選手として息子と全国を走れるのはこれが最初であり最後である。




安全運転大会というものを初めて知ったのが9年前。
その翌年には小4の息子を練習会に連れて行った。

「大きくなったら親子で出場できるといいですね」


皆、口をそろえて同じ言葉をかけてきた。



「もちろん狙ってます」


まずスクーターで走り出すことから初めてはや8年。
まっすぐ走ることすら危うかったのに、とうとう福岡県のゼッケンを背負って全国で戦うことになった。



夢にまで見た親子出場。



福山の距離の問題は我慢とお金が解決する。なんとしても達成したい!
その思いで特練に参加してきたのだ。



私にとって集大成の大会。



見上げると日差しがまぶしい。真っ青な空だ。

「さあ、今年は特別良い大会になりそうだ」


福山駅






《鈴鹿へ》

新幹線で岡山駅まで行き、そこで福岡チームと合流する。
先週会ったばかりだが、頼もしい面々だ。

いつものルートで名古屋駅・白子駅と経由し、タクシーで鈴鹿へと乗り込む。


見えた!鈴鹿サーキットの大観覧車。

毎回のことだが、これを見ると一気に気分が盛り上がる。

ホテルで受付をすませ、部屋で荷物開梱。
コースを軽く下見し、食事のあと軽いミーティングを行い就寝となる。

5回目ともなると慣れたものだ。



翌日もいつもよりちょい遅めの起床で、ゆったりと身の回りの準備をはじめる。
そのとき会場を視察に行っているコーチより電話が入った。


TAKA2「はーい、もしもし」
コーチ「TAKAさん、大変だ!想定外のことが起こった!」
TAKA2「え、いったいどうしたんですか?」
コーチ「ERがっ!ERがぁ・・・」
TAKA2「ええええっ?」
コーチ「ERが赤だ!」


・・・


TAKA2「で?」



いや、たしかに福岡の一般Aの選手所有のERは黒ですよ。
大会車両に赤があったからって、3倍早いというわけでもないでしょう(笑)

そんな冗談で気持ちをほぐしながらも、そろそろ選手一同も会場に向かう。



コース下見で思ったことは以下のとおり(初日のバランス系のみ)

1.悪路応用(スキットプレート)
けっこうキツイかもとの話もあった。
たしかに5番パイロンはきつめに設定している。
が、ここの罠は1・2番パイロンだなと判断する。

1・2番はかなりゆるゆるになっている。最初の競技ということもあり、
ここを安易に甘く入ってしまうと5番パイロンが回れないというような設定に見える。

攻略法は、1・2番パイロンでしっかりとハンドルを切りきる!そうすれば5番パイロンはさして問題ないだろう。



2.ブロックスネーク
例年になくブロックの振りが規定どおりである。
いや、例年では規定以上の意地悪な振りになっているので今年は楽勝だ。



3.レムニー
噂によると、相当狭くしたらERが通れなくなって結局作り直したらしい(笑)
たしかにいつもよりはかなり狭い。
が、そもそも例年が簡単すぎてたわけで、今年も簡単であることにはさほどかわりはなさそうだ。



4.千鳥応用
前年よりパイロンを狭くし、かわりに道幅を広くしている。
特練のコースと比べれば天国である。



5.一本橋
今年は厳しくかなり短めに設定されている・・・わけないのだが、何故か短く見える(笑)



6.傾斜地
多分、大会始まって以来の大判振る舞いである。
ラインがありえないほど広めに設定してあり、今回のセクションでずば抜けて簡単な設定である。
いただきだ!



どうやらバランス系は、今年から一般Aに導入されたER基準で作成されているようで、
S-TECのインストもK車に慣れていないのか、どうしても甘めに作ってしまっているように思える。

こりゃー今回の大会は、750クラスは初日満点のオンパレードだな。
勝負は二日目だと心に刻んだ。


相変わらず、全国をなめきっているTAKA2だった。







《いよいよ一日目スタート》
さて、お土産を物色し昼食のあと、いよいよ開会式である。
返還される優勝旗を見ながら、一度でいいからあれを手にしたいなぁと心底思う。

競技説明を聞きながら、今回は今までのものとちょっと色合いが変わっていることに気づいた。
一般Aの車両がERに変わったというだけではなく、競技進行を早めるための施策がいくつか説明された。

一つは、全員そろっての準備運動の廃止。
そして選手への影響が大きいのがスタート手順の変更である。



簡単に言うと「待ったなし!」に変更になった。

いままではスタート時に審判が「よろしいですか?」と声をかける。
まってくださいといえば、いくらでも待ってくれていた。
が、中にはそこからイメージトレーニングをするような人もいるとかで今回からは次のように変更となった。



スタートラインの前に黄色い線が新設された。
選手はまずそこに停止する。
審判はその場でゼッケン確認、それとコースの準備確認を行う。
「ゼッケン○○番、前へ」の呼びかけでスタートラインに並ぶと、
いきなり「用意、スタート!」と旗が振られる。

このスタートの合図から3秒以内に発進しなければ減点となる。

ま、実際には3秒を測っているわけではなく、発進の手順以外のことをしたらだめよ。
ということらしいが、気分を落ち着ける暇もないのは選手の心理にどんな影響が出るだろう。




さて、会場に移動し、いよいよ大会開始である。

福岡チームは女性クラスと高校生クラスが初出場である。
また、一般Aクラスは2回目の出場だ。

5回目であり、最年長であり、キャプテンでもある私は当然気合を入れる。


「今年も私が先頭に立ってみんなを引っ張っていくんだ!」


私に課せられた当然の責任だ。

また、一般Bは初日はかなりの選手が満点で折り返すはずだ。
であれば私に課せられたノルマは減点ゼロ!
さして難しいノルマではない。


大会車両に跨り、クラッチ・ブレーキを調整しながらも気分は高ぶる。
「早く俺に走らせろ!」

ゆっくりと最初の競技である悪路応用のスタートラインにバイクを進める。




《Dコース》

さて、今回は思いのほか動画が早くもらえたので、ここからはこれも含めてレポートする。
また、過去4回の減点も紹介するが、なにぶん記憶をたよりに行うためもしかしたら
間違いがあるかもしれないのでご了承いただきたい。

まあ、ミスは意外と忘れないものだと思っているが(汗)・・・




大会では全員が順番に走るのではなく、8人の班単位で競技を行う。

班ごとに、バイクの調整・試走(といってもゆっくり回りを一周するだけ)・競技を行い、
終わったら次の8人にバイクを渡すという具合である。

私は第3班の先頭となった。

普通、先頭はいやだという人もいるだろうが、今日の私は早く走りたくてうずうずしている。
まったくもって緊張していない(笑)



試走でぐるりと回りを一周し、私だけそのまま黄色ラインに向かう。
停止をするとゼッケンとコースの確認。
前へどうぞの声でスタートラインに並ぶ。
ラインの位置を確認しながらじわりとバイクを進めている途中に「用意!」と声がかかる。

おいおい、まだ停止してないぞ。

「スタート!」

競技には問題なかったが、バイクが停止して、ライダーが正面向くくらいまでは待って欲しいなぁ・・・

わざとのようにゆっくりしっかり後方を確認し、じわりとスタートする。


私にとって、悪路応用の怖さは一番最初の競技であるということだ。
これは普通、緊張がピークであるということもあるが、
バイクの個体差が分からない状態でのスタートであるということが怖い。

大会の車両はハンドルストッパーも修正されすべて同じハンドル切れ角である(はずである)。
しかし、練習車両は転倒等でかならずしもそうとは限らない。
スタートした後、意外と切れずに慌てることもある。

また、スロットルセンサーの付いた後期型のCB750はクラッチワイヤーの取り回しが変更になっており、
ハンドルの右フルロックと左フルロック、それとまっすぐの時では半クラのつながる場所が違う。
しかもバイクによってその差がまちまちである。

これは停止時の確認や試走だけではなかなかつかみにくい。


以下にある動画を見ていただければ分かるが、第一パイロンの左ターン。
それと第二パイロンの右ターンに入るところで、こまかくハンドルを動かしながら
フルロックの位置と半クラッチの位置を確かめる。

第三パイロンの左ターンに入るところではすでにマシンと心が通じ合う。

必要以上なほど、ばっちりとラインに乗った。
一番の肝である第4パイロンから第5パイロンに向かう右ターンでは途中でハンドルを戻す余裕があるほどだ。

丁寧にラインをトレースし、まずは減点ゼロで悪路応用を終える。




※過去の減点数
 一回目:0点
 二回目:0点
 三回目:0点
 四回目:5点
 五回目:0点




悪路応用が終わり、ブロックスネークへと移動をする。
この時にちょっとしたイタズラ?というか試してみたいことを思いつく。

ブロックに近づいたところでいきなり右目を痛そうに閉じ、黄色ラインで、
「すいません、汗が・・・」と目をぬぐい始めた。

さて審判はどうするかな?と思っていると、じっと待っていてくれる。

ああ、すいません。
やっぱり審判も鬼ではありません。
どの審判も、選手には持っている力を存分に発揮して欲しいと思ってくれているようだ。

へんなカマをかけて申し訳ない。
罪悪感を感じながらスタートした。

ブロックスネークそのものはもちろん簡単である。
するすると走り、秒数を確認した。
減点ゼロである。




※過去の減点数
 一回目:0点
 二回目:40点(脱輪疑惑により)
 三回目:0点
 四回目:0点
 五回目:0点


さて、次はレムニーである。
ここでも目をしぱしぱさせながら黄色線で汗をぬぐってみるが、審判はじっと待っていてくれる。

状況にはよると思うが、このレベルであれば許してくれそうだ。



スタートラインからコースを見るとたしかに狭いがどおってことはない。
ここの肝は第一パイロンと第二パイロンでしっかりとラインが出せるかどうかだ。

オーバースペックにこの二つをトレースし、余裕で下りてくる。
CB750では楽勝である。

これでDブロックは減点ゼロ。悠々とドヤ顔で戻ってくる。


※過去の減点数
 一回目:0点
 二回目:0点
 三回目:0点
 四回目:0点
 五回目:0点



《若手の活躍》


さて、全科目の1/4が終わったところでみんなの元に戻ってきた。
今回の福岡県のトータル減点は一人40点の160点あたりを現実点として腹積もりしていた。
とはいえ、初参加の若者2名とはじめてのバイクが一名。
私ができるだけ減点を少なくしてみんなの泳ぎしろを増やしてやる必要がある。

すでに終了している女性クラスの法規走行は、自己申告では満点のような気がする。と・・・(笑)

そうこうしているうちに高校生クラスのTAKA3の競技が始まる。
正直、自分の競技よりはるかにどきどきする(笑)


「最初のセクションはブレーキだから、緊張してると一発で終わってしまうぞ」
前々から彼には伝えている。
実際、高校生クラスでブレーキを失敗する選手は多い。
しかし、緊張するなと言われて「じゃあ、緊張しません」とはならないのが全国大会だ。

心配しながら見ていると・・・
あれ、結構落ち着いているんじゃない?
いや、それどころか自信に満ちて余裕のようにも見える。

ほほう・・しかし次からのスピード系は、TAKA3は体重の問題もあり(笑)接地の危険性がつきまとう。
また若さゆえの無理走りになる可能性も高い。落ち着いていけよと祈る。

コンビネーションスラロームスタート!
若者特有の特攻カットビ!

と思いきや、きれいにラインをトレースしきわめて大人の走りだ。
これも設定タイムをクリアし満点終了。

あ、あれ?

次にコーススラローム。
これも上手い。接地を気にしながら流れるように走る。
しかもしっかりと余裕で体を入れている。

設定タイムにはわずかに及ばなかったが、高校生クラス最速?じゃないかな?と思えるタイムでゴールに飛び込む。

すごい、すごい!
親の心配とは裏腹にまったく危なげ無くスピード系を終えてきた。

「な、なんか思ってた展開とちがうぞ・・・」

TAKA3が戻ってくる。
喜んでいるかと思いきや、
「くっそーあとちょっとで設定タイム切れたのに! 女性クラスは何秒ぐらいかなぁ」と・・・

その後、女性クラスのスピード系が始まる。
これもまったく不安要素なし。
結局内容はTAKA3同様すばらしいものだ。(コーススラロームのみわずかに設定タイムに届かずというところまで同様)

どうやら福岡は、他県ではなく高校生クラスと女性クラスでライバル心を燃やしているようだ(笑)

こ、これはもしかしていけるかも!
とりあえず一安心。自分のことに集中しよう。




《天国から地獄への転落》

さて、私の競技時間となった。

本日の競技はあと三つ。さくさくと終わらせよう。

競技車両を確認すると、先ほどと同じバイクである。
これならすでに心は通じ合っている。

「あと三つ、よろしくね」
軽くタンクをなでた後、スタート位置に進む。

まずは千鳥走行。
パイロン幅は狭くなっているが、道幅が広がっているため楽勝である。

「用意、スタート!」
追い立てられるようにスタートするが、このやりかたもリズムが途切れず、けっこうよいかもと思い始める。

以前のように「よろしいですか?」と聞かれると、なんか「いや、ちょっと待って下さい」と言いたくなるものだ。




今回は、ラインから10cm、パイロンから10cmの余裕をもって走破することが目標である。

コースへ侵入する。
ちょいと控えめにバイクをバンクさせ、また早めにハンドルを切り、控えめにパイロンに近づき控えめに倒しこむ。

ライン・パイロンともにしっかりと余裕をもってゴール!
と思ったら手前のラインには近すぎたみたいでした(汗)
ま、もちろん減点無しである。
 
※過去の減点数
 一回目:5点
 二回目:0点
 三回目:0点
 四回目:10点
 五回目:0点




続いての競技は一本橋である。
ここは要注意だ。
なぜなら、全国大会の一本橋はかなり短く設定されている。
・・・はずはないのだが(笑)なぜか短く感じる。
いや、時空がゆがんでいるのか、体内時計が狂うのである。

今回も慎重に進入し、一本橋の真ん中15cmのみを使うつもりでわたりきる。
もちろん減点なしである。

※過去の減点数
 一回目:0点
 二回目:0点
 三回目:0点
 四回目:0点
 五回目:0点




さて、本日最後の競技は傾斜地である。
もともとトライアルをやっていた私は得意な科目のはずであり、また、今回は設定が大幅にゆるい。

待機線に止まって眺めてみると・・・
こりゃ広い!
どうやったって通れるように見える。



過去の大会ではここでは5点捨てるつもりで安全策で走っていたが、
今回ばかりはわざわざパイロンに当てる必要は無いだろう。

とっとと終わらせて明日の競技に集中しよう。
そんな気持ちもわいてきた。

ゆっくりとスタートし、少々バランスを崩してもパイロンに接触しないよう、十分な余裕をもって通過。
うん、しっかりバイクも安定している。
すべりやすい鉄板なのだが、フロントとリアのブレーキも十分に使いながらゆっくり余裕で下ってくる。

完璧だ!すばらしい!
自画自賛しながらゴールの審判にドヤ顔を浴びせながらゴールする。・・と・・



審判が申し訳なさそうな顔をしながら近寄ってきた。

「上のラインにちょっと触れたみたいですね」

「え?触れてないと思いますけど・・・」

「いや、一回目の上りで触れてますんで、減点40です。」

は、はぁ・・・・

審判に促されて待機位置に移動するが、現実が理解できない。


え?40点減点? もう大会終わり? 優勝は?

初日は当然満点で折り返すつもりでいた。いや、当然そうなると思っていた。
頭の中は次の日の競技をどう攻めるかを考えていた。
こういう事態はまったく予想にもしていない。


悲しいとか悔しいとかの感情の前に、この後どうしたらいいのか分からない。










※過去の減点数
 一回目:40点
 二回目:5点
 三回目:※雨のため中止
 四回目:5点
 五回目:40点




《苦悩との戦い》

なんて言おう・・・

福岡チームの待機場所に戻ると選手・コーチは誰もいない。
皆、他の選手を応援に行っているようだ。

本当なら皆から拍手をもらい、初日満点を噛み締めながらも
「いや、まだ大会は半分終わっただけですから明日が勝負ですよ」
なんて台詞を吐きながらチームの点数を皮算用していたはずだ。


ひとりで椅子に腰掛け現実を受け入れようとするが、一年間思い続けたストーリとはあまりにかけ離れた現実。
完全に自分が中心からはずれてしまった。

すでに終わってしまったこんな私に誰も興味はないだろう。

やっと知り合いに話しをするが、「ありゃ踏んでるように見えましたよ」と・・・


いやいや、私は傾斜は得意なんですよ。
特にあの幅ならちゃんと行けるんです。
なんならあと100回連続で行って見せましょうか?



心の中で負け犬の遠吠えが続く。




最大のショックは、線を踏んだことに本人が気づいていなかったことだ。

叫ぶか?泣くのか?そんなことしても何もならない。
そんな元気さえ無い。
とりあえず私の反省部屋である喫煙所に駆け込む。

「たまたまですよ、やっぱり全国は怖いですね」
友人が慰めてくれる。


しかし、このころになると、これがたまたまではないことに私もうすうす気づき始めていた。




正直、特練でもラインに近いことは何度か指摘されている。
もちろんそのときはタイヤがどこを通っているかは概ね把握できており、わざとギリを突いていた。

いや、むしろギリを攻めることに快感を覚えていた。
 


「まあ、本番はすこし余裕を持っていきますよ」



そんなことを言っていたのだが、ゆるゆるのコースで無意識のうちにギリを狙っていたのだ。

まだ大会は終わっていない、しっかりしろ!
頭では分かっているがモチベーションは上がらない。

「もう帰りたい」「明日走ることに意味があるのか?」

いけないということは分かっている。
分かっていながらもそんな気持ちまで湧いて来る。


そんなとき他県のコーチ?がこんなことを言った。
「いやいや、一日目にでかい失敗するのも良いですよ。
だって二日目は好きなように無茶できるじゃないですか。点数無視して楽しんでください」


慰めで言ってくれたのだろう。
しかしそれを聞いたとき、申し訳ないが私は違うと思った。

失敗したのは私であり、終わったのは私だけの話である。
福岡も若手は今も上位をめざし頑張っている。



はたと思う。

今まで私は「俺が引っ張るんだ!俺が点数を稼ぐ!俺がカバーする!俺が!俺が!俺が!
こんな気持ちで頑張ってきた。

しかし今、福岡チームの主役は私ではない。間違いなく若手二人だ。

私がやらなければいけないことはこの二人の足を引っ張らないこと。
そして経験者としてのアドバイスとサポートじゃないのか?


私は第一線から落ちてしまったが、今、第一線で走り続けているのはこれからを担う若者だ。

世代交代?

そんな話はどうでもいい。

イケる奴に賭ける!。


ここまで気持ちが切り替わるのに夜の23時まで費やした。



《自分のやるべきこと?》
大会二日目。
私の最後の全国大会だ。

前日の夜、各県の中間発表があった。
正直、私の成績は見る必要すら無かったが、一般Bの成績を見ると満点が4名しか居ない。
思ったほどの人数でないことに驚いた。

”5人目はここにいますよ〜”

やはり未練が残る。



さて、その他の成績を見ると、女性クラスが単独トップ!
しかし二位との差は5点だ。

またTAKA3は法規で5点引かれており一位タイで6人がひしめき合っている。
ただし、全国大会では点数が同点の場合は法規の点数で勝負が決まる。
そういう意味ではまだ追いかける立場である。

女性クラス・高校生等クラスともに今日はバランス系の戦いである。
スクーターはバランス系は比較的点数が取りやすい。
が、逆に一発の失敗がカバーできない競技でもある。

ミスしないようにガマンし、他県の出来に賭けるというガマン比べの神経戦だ。

われわれ一般クラスは今日はスピード系。
地味に点数を引かれる競技である。

「さて、行くか!」

すでにじりじりと太陽が照りつける。




《スピード系、今出来ること》

現地に到着するとすぐに競技が始まる。
まずは女性クラス。コーチがびたりと寄り添い対策を練っている。
とはいえ、いつもどおりに行けというアドバイス以外は無いのだが・・・

結果、軽微なパイロンタッチで5点減点。もちろんこのレベルは当然合格点。
むしろ無理をしない走りは上出来である。

いや、初日に上位にいるとそのプレッシャーからなのか二日目に崩れていく選手が多いのである。
しっかり守りきる姿は初出場とは思えない堂々としたものだ。



さて、私の順番がやってきた。

スピード系。
ステップ接地すると10点マイナス。
パイロンに当てると5点マイナス。

若手が5点を守るためにがんばっている。
間違っても接地やパイロンタッチは許されない。

まず私の競技はブレーキングである。
ここでの私の仕事は「消化」である。

危なげなくきっちりと仕事を終えた。

※過去の減点数
 一回目:0点
 二回目:40点
 三回目:0点
 四回目:0点
 五回目:0点

次はコンビネーションスラローム。
気になるのは接地だ。

ここはタイムで5点減点で良い。無理は禁物。

しっかりと体を入れ、ステップを持ち上げる。
無理はせずリズムに乗って大きく孤を描く。

どうだ!

やば、いくらなんでもちょい遅すぎた。

※過去の減点数
 一回目:覚えてない
 二回目:覚えてない
 三回目:5点
 四回目:0点
 五回目:10点


次はコーススラロームである。
ここも5点減点を目標にしていたが、先ほどのコンビネーションスラロームで5点よけいに減点されている。

とりあえず無理はしないがあわよくば減点ゼロだといいな〜的なタイムを目指してみる。
スタート!

今回はいままでになくスピードが乗る設定である。
事前に他県の走りを見たがかなりのライダーが接地していた。
「ははん、一日目満点の人はみんなここで消えるな
そう思うくらいの接地のオンパレード。

私はというと直線でしっかり開け、ステップを気にしながらスムーズに曲がる。
最後はちょい突っ込んでみるが終始ジェントルにクリアする。


うーん、やっぱわずかに設定タイムに届かず。
予定通りの5点減点だ。

※過去の減点数
 一回目:覚えてない
 二回目:覚えてない
 三回目:覚えてない
 四回目:15点
 五回目:5点

スピード系最後はコーナーリング。
この設定で3.3秒なら妙なことしない限りタイムはOKだろう。

ここもしっかり体を入れ、むしろ流すかのようにクリアする。
もちろん減点なし。


「とりあえずまとめたぞ、あとは若いやつ頼んだ!」







《成長。そして世代交代》

さて、自分のことより気になるTAKA3だ。

本日最初の競技は悪路応用、スキットプレートだ。
聞くところによるとけっこうな人数が回りきれずにコースアウト・転倒を繰り返している。
が、息子の敵はここをいとも簡単にクリアしているはずである。


もちろん、福岡の選手も特錬ではもっと厳しい設定でクリアを連発している。
行けないはずはないのだが、正直心配である。
初日の上位者で二日目に無理をして消えていく選手を何人も見ている。
しかもTAKA3はまだ追いかける立場だ。

本人には・・・
「心配するな、特練よりコースは甘いし洗剤も撒いてない。行けるぞ!」と激励する。

TAKA3が話しかけてきた。
「でも、けっこうスキットプレートは厳しいみたいだよ。みんな失敗してるみたい」

ははん、やっぱり心細いのかと思い、大丈夫、特練より楽だと言い聞かせると、信じられない言葉が返ってきた。


「いや、俺は行けるよ。楽だとみんなクリアしちゃうでしょ。
このくらいだと減点者が増えるだろうからチャンスだよね!


正直驚いた。
あのびびりの泣き虫小僧がこんなこと考えているなんて。

本当は心配が無いはずはない。
ただ、負けず嫌いのDNAは間違いなく引き継がれているということだろう。

自分を奮起させ、ポジティブに捕らえているのだろうか。



「お前、頼もしいな」



間違いない、今回の主役はこいつと女性クラスの二人だと確信した。




実際にスクータークラスのスキットを見てみた。
これは・・・びびる(笑)

いつも思うがスクータークラスのバランス系の設定は、一般クラスからすればバイクが走れるコースではない。



さて、TAKA3がスタートする。
第一パイロンから第二パイロンに思い切りフルロックでアプローチする。
そこから第三パイロンを抜けるまで・・・

私は息をすることも忘れていたようだ。

一定速度でゆっくりと回る。




「っっっっったぁ!」




思わず声とも取れない声が漏れた。
しっかり仕事を終えて減点ゼロだ!

次のブロック・レムニーともに危なげなく特練と同様にクリアする。
ここまで減点ゼロ!


ちなみに私は競技中で見れなかったのだが、女性クラスも減点ゼロでクリアした。

すなわち、女性クラスはどんなに悪くても点数的には一位である。
法規も満点であるので、女性クラスが優勝を”逃す”ためには以下のすべての条件を満たす必要がある。

・昨日二位の選手が二日目満点であること。
・法規が満点であること。
・コーススラロームが福岡より早いこと。

一つ目と二つ目は可能性として起こりえるが、三つ目はないだろうとなぜか安心する。
それほど福岡のスクーターは早い!






《全国大会に出場する本当の理由》


ここまで来ると、だんだん皮算用にも真実味が増してくる。
福岡県の最低目標である「団体戦一桁」は、どうやら射程距離に入っているようだ。
しかし、油断は大敵である。しっかりと点数を守りきり一つでも順位を上げていこう。

さて、私の最後の競技時間が迫ってきた。
法規走行だ。

私の県大会を知っている人は意外に思うかもしれないが、全国での法規はかなり得意科目である。
今までも一度だけしか減点されておらず、その理由も分かっている。
※県大会では採点の視点が違います。このような走りをすると100点くらい減点されるかもです。
良い子は真似しないように。

油断は大敵だが、今回もしっかりとイメトレを積んできた。
皆で作ったストーリーを信じ、その通りに演じればよい


「さてと、本当に最後の最後の競技だ。」


全国大会では、競技を行うコースは明確に区分けされている。
そのコースに入れるのは選手と審判だけである。

観客はもちろん、監督やコーチも入ることが許されない選手の聖域だが、そこに入れるのは今回が最後だ。

がんばる競技も概ね終わったしここからは私の時間。じっくりと風景を目に焼き付けることにしよう。




バイクに跨りスタートラインへとバイクを進めているとコース入り口に数人の仲間が・・
選手たちがじっとこちらを見ている。
すべて一般Bのおじさん選手が私を出迎えてくれる。

私が前を通過するとき、こぶしを握り締め力強くガッツポーズを送ってきた。

この意味は当然「がんばれ!」というエールだ。
しかし、上位に絡めない私にはもう一つのメッセージを感じ取った。
それは、

「最後の走りをしっかりと見届けますよ!」

このメッセージだ。
熱いものがこみ上げてくる。

「現役選手の見届け人に恥ずかしい走りは見せられないだろう?」

自分に問いかけた。




お礼といってはなんだが、満点の最高の走りを披露しますと心に誓う。
堂々と走り切ろう。




いつもどおりスタートする。
イメトレではすでに100回以上走ってきたコースだ。
きちんきちんとスキなくこなしていく。

最後のチェックポイントである障害物が見えてきた。
「あ、もうすぐ終わってしまう」そう思った。
と同時に突然景色が変わった。
まるでトンネルを抜けたように雰囲気が変わった。



緊張感とはあまりにかけ離れた穏やかな気持ちであり、
上手く走ろうとかそういう気持ちとはまったく違う。突然に不思議なほど周りが色鮮やかに良く見える。





何年も前から夢に出るほどイメトレを繰り返してきた。
「一度でよいから全国に出てみたい」ここから始まり、どうすれば上位にいけるのか、いつも考えていた。

でもその数年間もあと数十メートルですべて終わる。
最初は怖かった審判の目も今となっては仲間として親密感が湧いてくる。

「もうすぐ終わる」これが心に大きく満ちてくる。




「しっかり見ててくださいね」
ライン手前で停止し、確認のため大きく顔を向けると、
汗なのか・・・ぽとりと何かがタンクに落ちる。




CB750、いいバイクだなぁ。

いままでがんばってきてよかった。
結局優勝はおろか、最後の大会でも痛いミスをやってしまった。
しかし、今思えば過去の記憶は楽しいものばかりだ。

後方を確認すると、見届けてくれている仲間や、これから走り出す選手たちが見える。
次の世代もまちがいなく育ってきている。
なにも心配はいらない。


小さな声で
「後方・・すべてよしだな・・・」
とつぶやきゴールに向かってゆっくりと走り出す。



ぐるりと外周を走ると停止線が見える。
あそこまでだ・・・




もう一周くらい走らせてもらえんかなぁ・・・いや、ずっとぐるぐる回っててもいいかな。





思いとはうらはらにあっさりと停止線がやってきた。

「はい、けっこうですよ、ご苦労様」

審判から促されバイク待機位置に移動し、キーをOFFにする。
エンジンは停止し、これで選手としては終わりとなった。





待機位置で見守っていてくれたライバルが拍手をしながら迎えてくれる。
「5回の大会、お疲れ様でした!」

しっかり見届けてくれていたようだ。

私の気分も晴れ晴れとしている。やりつくしたという感じだ。
彼のもとへ近寄っていく。



私は笑顔で話しかけた。
「私の大会、終わっちゃった・・・」

しかしここまで話したとき、突然目からぽろぽろと涙がこぼれおちた。

相手も驚いたかもしれないが一番驚いたのは私のほうである。


私はもっと覚めている人間だと思っていた。

悔し涙、さびしさから?

いや、違う。

「もう走れない」というさびしさと、「もう走らなくて良い」という安心感が一気に湧き出てきた。

こんなこと思うなんて・・・
すぐに大会が好きになり、なんとしても出場を目指し、まわりに呆れられるほど練習した。

強がりを言って突っ張ってきた心の何かが崩れたかのようだ。


彼はだまって微笑みながら私を見てくれている。

今しか感じることのできない不思議な気持ちだ。
短い時間だが、ちょっと素直に身を任せてみることにする。



※過去の減点数
 一回目:0点
 二回目:0点
 三回目:10点
 四回目:0点
 五回目:0点






《福岡県の底力》
喫煙室で気分を落ち着かせる。いや、最初から気分は十分に落ち着いている。
充実感というか、達成感というか、これを一人で味わっていた。

さて、選手としての私の競技は終了したが、福岡県はいまだ戦いの最中だ。
皆の走りっぷりを応援に行くことにしよう。


今回はスクーター部門の活躍が目立つ大会であるが、その他にも新しい発見がいくつかある。

たとえば一般Aのスピード系であるが、「同じ人?」と言いたいくらいのアクティブな走りを見せた。
この人こんなに早かったんだ・・・認識を改めた。

びたりとバンクさせがんがん攻める!コンビネーションスラローム減点ゼロ!
コーススラロームは途中でコースを見失い大失速するが、そこからの巻き返しで結局、減点5点。


皆が皆、5点を守るためにがんばっている。




いよいよ福岡県としては最後。TAKA3のバランス競技を残すのみとなった。

この競技の最後には前日私がミスをした傾斜地が残っている。

「パイロンタッチは想定内だ、とにかくラインに気をつけろ。俺の敵を取ってきてくれ」
そう言って息子を送り出す。

千鳥も完璧。
一本橋にいたっては、25秒までじっくり遅乗りを行い、その後スピードを上げて通過するという余裕を見せる。

そして、傾斜地。
上のラインからは余裕をもって走ると言っていたが、見るとけっこうギリである。
そうか・・・練習より傾斜が緩やかな分、しっかり余裕を取ってないとのぼりすぎるのかもしれない。

TAKA3、ほんのちょっとだけパイロンに触れる。結局二日目は減点5で終わった。
トータル減点はこれで15点。
優勝を考えるとなんとも微妙な位置だ。

「くっそー傾斜地で失敗した!」
TAKA3は悔しがっている。
が、息子よ、あれは正解だ。
悔しがるなら初日の法規走行を悔やむべきだ。





《パレードにて》

昼食のあと、パレードの準備を行う。
サーキットを走ることには変わりはないのだが、私としては体験走行よりもパレードのほうが好きだ。
大会で一番ほっとする時間だ。

全員分のバイクがそろわないのか、大会には似つかわしくないバイクも多い。
「これはないよねぇ」なんて言いながらもまんざらではなさそうだ。

各県の選手たちも皆笑顔で雑談する。
良かった人もそうでなかった人もみな楽しそうだ。

全員で並んで鈴鹿サーキットをゆっくりゆっくりと走る。
スピードも遅いため、雑談をしながら風景を楽しむ。

このひと時が大好きだ。

みな、緊張からの開放感で笑顔が絶えない。

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※緊張感から解き放たれ、みな最高の笑顔を振りまく。

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※先頭が見えない。こんなにたくさんの人がそれぞれのドラマを演じたんだなぁ・・・

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※チーム福岡



「ああ、ほんとうにこれで終わりなんだなぁ・・・」
多くの人が二日間、いろんな思いで汗を流したんだなぁ」

これだけの人だ、私と同じく今回が5回目の人も何人もいるだろう。
また、初出場の人も沢山いる。

私同様にそれぞれがそれぞれの物語をここで刻んでいるんだろう。

そんなことを考えながらサーキットの中から見る最後のパレードを目に焼き付けることとした。

気分的なものだろうが、えらい人たちのありがたいお話も今回はあっという間に終わった気がした。

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※ここからの風景はもう見ることはない。



お世話になったバイクをS-TECの倉庫に格納する。

「さて、片付けが終わったら移動するぞ。皆でソフトクリームを食べに行こう!もちろん私がご馳走する!」

みんな一斉に「やったー、ごちになります」と声があがる。

本当は生ビールが良いのだが(笑)、今日はソフトクリームで乾杯をする。
私が初出場の時、同じようにご馳走になった時と変わらない味だ。


その後、荷物を置きにホテルに戻ったとき、携帯に着信があることに気づく。
「もしもし、TAKAさん?あ、今応援に来たんですけどどこにいますか?」
福岡のバイク仲間(大阪単身赴任コンビ)二人が応援に来てくれた。
が、もう終わっちゃいましたよと告げ、成績発表会場にてちょこっとだけ話をすることとなった。
遠くから駆けつけてきてくれて本当にありがとうございます。

さて、いよいよ成績発表だ!




《来年へと続く成績発表》
会場に入るとすぐに成績発表が始まる。
さくさくとあっけないほど発表が続く。

まずは団体戦。

数県が「東京の三連覇はなんとしても阻止したいですね」と話をしていた。
私も同意見だ。

しかし、なんだかんだ言いながら多くの県は東京を目標にしているという裏返しの発言である。
私も、一度東京に一泡吹かせてやりたかったが残念だ。
これからも長く、目標となる強い東京でいて欲しい。

さて、団体発表のあとは個人の発表だ。

まずは一般Bクラス。
悲しいかな蚊帳の外から歓喜の声を聞くこととなった。
次に一般Aクラス。
ここも蚊帳の外ではあったが、知り合いが表彰台に呼ばれることとなった。
思わず「おお!やった」と叫んでしまう。

さて、いよいよスクーター系の発表だ。
高校生クラスは・・・

「第二位!福岡県代表TAKA3選手!」
皆の喜びのどよめきとは裏腹に残念そうに顔をしかめるTAKA3。

最後に女性クラス。
「第一位!福岡県代表○○選手!」
顔を輝かせて表彰台に向かっていく。
その後姿をじっと見つめるTAKA3。

一位の表彰の後、二位と三位の表彰となる。

表彰台では苦し紛れの愛想笑いを浮かべ、
憮然として戻ってきたTAKA3の悔しそうな顔をしばらくは忘れることが出来そうにない。


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表彰式のあと、成績表が配られる。

福岡県は・・・4位!
良い出来だ!

しかし待てよ・・・・もし私がミスをしてなければ・・・

二位だった・・・

愕然としたが、「はいはい、タラレバはもういいよ」の声がかかる。
うーん、いまさら何を言っても仕方がない。

ちなみにTAKA3は一位と同点の二位だった。
点数が同点の場合は法規の点数が良いほうで順位が決まるのである。




《家路》

さてここからはいつものドタバタが始まる。
記念写真を撮影し、すぐにシャワーを浴びる。
体が乾く間もなくタクシーに飛び乗り白子駅へ。

ホームで缶ビールで乾杯し、列車で爆睡。
名古屋駅できしめんを食したのち、新幹線に飛び乗る。

ふぅ〜やっと落ち着いた。
皆で大会の話やバイクの話、今までの練習の話に花が咲く。


しかし、福山駅はあっという間にやってきた。
一人だけ途中下車し、タクシーで誰もいない自宅に戻る。

電気を点け、洗濯機を回しながら落ち着いたところで缶ビールを取り出す。

振り返るとテーブルの上にはコース図や昨年大会のDVDが置きっぱなしになっている。
当たり前だが出発の時のままだ。

これを横目で見ながらビールを一口・・・・

そういえばパレード前にどこかの県が「帰ったら来年に向けて練習開始だ!」なんて言ってたな。

すでに2012年大会は始まっている。そう言う人も沢山いるだろう。

私も形は変わるが大会に関われることには変わりは無い。

ぐずぐずしてられないぞ!
そう思いながら外に出る。

星空の下、借り物のCB750と乾杯し、ビールで祝杯を上げつづけた。






謝辞




思えば私の安全運転大会との出会いはマイミクさんが勝手に(笑)申し込んだ県大会出場がきっかけでした。
なかなか踏ん切りをつけない私の背中を押してくれたんですね。

これが無ければ私はこの世界に入ることはなかったでしょう。
ありがとうございます。

また、練習会に参加し、先輩たちの走りに目が点になったことを思い出します。
それまでは井の中の蛙、バイクの乗り方を教えてもらうなんてことは想像すらしてませんでした。

バイクを意のままに操る。
この楽しさに魅了され、毎日会社帰りに通報ギリまで駐車場でくるくる回ったものです。
がんばったというよりは楽しくてしょうがなく走らずにはいられない。
そんな気持ちで8年間走り続けてきました。



全国大会も5回目ともなれば知り合いも多少出来てきます。
今回もいろんな方に声をかけられました。

驚いたのはそのうちかなりの方が、私が5回目だということを知っていたことです。
それと親子出場。
また、それなりの年齢であることも。(これは見ればすぐ分かりますが・・・)

それと、私に限らずですが、NET上の動画をたくさんの方が見てくれているということも驚きでした。


「若手に追いつけないとき、TAKA2さんの動画を見て気合を入れなおしてます!」

「練習会で教えてくれる人がいないので、あの動画が教材です!」

そんな声をかけてくれる方もいらっしゃいました。

また、25年ほど前の会社の同僚(今は東京?に引越し、結婚して子供もいるらしい)
からのおどろきのエールを伝言でいただいたり。

「やっぱり来年、もう一度全国大会にチャレンジします」と言ってくれたライバル。

宝物の言葉をかけてくれた福岡一般A代表の彼。(内容は秘密です。私の中に保管中)


自分では何もしていないのに、思った以上にいろんなことで影響しあったんだなぁと思いました。

また、逆に私も沢山の方から影響を受けました。

選手や関係者だけではなく、同僚・バイク仲間などの応援のおかげでここまで続けてこれたと感謝しています。


決して優勝をひがんでいるわけではないのですが、
もし途中で優勝していたら、今回のような感動は無かっただろうなぁと思います。

そう思うと私の5回の大会はすべて最高の大会だったのかもしれません。


「人は知らず知らずのうちにその人の最高の人生を歩むようになっている」

これが私のポリシーなのですが、今回もそうだったようです。



お得意のタラレバですが・・・
1回目2回目は別として(汗)。

3回目、法規走行でのミスがなければ1位と同点の2位。
4回目、ばかなミスと、普段やらないミスがなければ2位。
5回目、ばかなミスがなくて、スピード系も優勝狙いの走りができていれば2位。


なーんだ、やっぱり1番には手が届いてませんでした(笑)

いや実は、気合入れるため口ではいろいろ言いましたが、心のどこかでは「優勝は無いな」とずっと思ってたんです(汗)。

というか、やっぱり全国大会はすごいですね。優勝って尋常ではない技術と精神力が必要です。


「大会が終わったらツーリングに没頭しよう」
ずっとそう思っていたのですが、なかなかそうもいきそうにありません。

これからも別の形で大会には携わらせていただきたいと思っています。
今後ともよろしくお願いいたします。


また、我が家には今回で銀のメダルと銅のメダルがそろいました。

あと一つ、一番綺麗な色のメダルが欠けています。

近い将来にここが埋まることを期待しています。
※できれば一般クラスのメダルがいいなぁ・・・


いままで応援してくれたみなさん本当にありがとうございます。
選手出場資格の無事終了と、大満足のうちに大会が終了しましたことを報告し、お礼に代えさせていただきます。



多分、この流れで指導員になるんだろうなぁと思っています。
今後はいままで教えていただいたことをばんばん放出していきます。
ぜひみなさんも練習会に参加してみませんか?

私の経験した感動をみなさんにも経験していただきたい。
その思いでこれからもがんばっていきます。

これからもTAKA2応援よろしくお願いします。



TAKA2の選手生活 無事完了