《大会にむけて》

私の守護神は龍神様らしい。いや、正確には龍神様だったらしい。過去形である。
今までに何度もそう言われている。道を歩いているときにわざわざ呼び止められて言われたことすらある。

元来、私はこういう超自然的なものはまったく信用しないタイプであり、気にも留めてなかった。
が、たしかに考えてみると過去の運転免許試験(普通車以外はすべて試験場)では、合格したときは必ず雨である。
原付・小二・中二・大二・大自すべてである。
また資格試験も合格のときは雨だ。
思い出せば、家内とのデートも雨ばかりだ(笑)

もちろん、何度も不合格を経験しているのだが、その時はなぜか雨は降っていない。
聞くところによると龍神は水の神らしく、出現するときは雨だとのこと。

こういう経験が多いため、昔から雨の日だと「なんか行けそうな気がする」のである。
しかし、数年前、しゃれで立ち寄った占い師から「すでに龍神はあなたを離れ、子供さんに移られています」と宣告されていた。



それから数年、こんな話は気にもとめてなかったのだが、
気づけば、全国大会が近づくにつれ福岡県は記録的な大雨となっていた。

しかも、大会前日の金曜日には雨は止み、雨雲は鈴鹿にむけて北上している。

「ははん、龍神さまはちょいと先行して出発したんかな?」
鈴鹿に向かう新幹線からうす曇の空を見上げながらそんなことを考えていた。




名古屋で近鉄に乗り換え、白子駅へ向かう。
タクシーに乗るころには雨が降りだし、鈴鹿到着と同時に土砂降り。

龍神さまと同時に鈴鹿到着である。



到着後、チェックインと荷物の整理を行い、雨の中早速コースの下見を行う。
が、案の定コースはまだ何も作られていない。


※一般Aの選手へ、下見にて熱い思いを語る?TAKA2


ざっと目を通しただけで夕食会場へ移動し前祝宴会?
温泉に入りさっぱりした後、部屋でミーティング。早々に就寝となった。







《大会一日目》

大会の朝は早い。6時よりコースの下見に出発する。
しかし、朝起きるとまさに土砂降りである。

本日法規走行である高校生クラスはそれでも下見へと出発するが、
本日バランス系種目である一般AとBの選手はこのまま待機する。
バランス系のセクションはまだ作られていないので、下見に行ってもだだっぴろいアスファルトを見るだけだからである。



さて今回、私の大会テーマは「全国大会をなめてかかれ!」である。

前回はそうとう気合をいれて挑戦した。
極度の緊張と不安、疑心暗鬼、そのためまったく自分の走りもできず、どう走ったのかの記憶さえ無い。

「まずは自分との戦い、そのためには雰囲気にまけてはいけない」と思い、
今回は「そんなにたいしたものではない」と自分に言い聞かせました。

おかげで当日もまったく緊張なし!
昨年はご飯ものどを通らなかったのに今年は朝ごはんが美味しい(笑)


さて、バイキングで和食と洋食、それぞれ朝食を食べた後、
そろそろコースもできたころだろうと再び下見に出かける。。






《雨のコース下見》

大会は二日間にわたって行われる。
私が出場するクラスは一般Bクラス。750クラスだ。

またコースはスピード系のA・Bブロックとバランス系のC・Dブロックを二日間で消化する。

一般Bクラスの一日目の競技はDブロックとCブロック。
ちなみに一般BクラスはCブロックを先にアタックし、次にDブロックをアタックする。

ってことで、ここでの下見はDブロックからアタックの順に見ていこう。




・Dブロック
まずはスキットプレート。
外から見るだけだが、パイロンの配置は甘い。
しかも路面も洗剤攻撃もないし泡も立っていない(笑)
いつもの練習にくらべれば極めて楽勝に見える。

ここは昨年も満点だったし、今年はさらに甘くみえるためバランスだけ気をつければ大丈夫だろう。
支給のバイクに乗って一発目のセクションであるため慎重になる必要はあるが、コースは楽だと自分に言い聞かせる。


次にブロックスネーク。
ちょいと短い気もするが、いつも通りに走ればまったく問題なし。
昨年はここで脱輪を宣告されている。
見てろ!今年は絵に描いたようなすばらしい走りを見せ付けてやるぜ!

三つ目はレムニー
あまあまである。


・Cブロック
千鳥
昨年はここで5点減点されている。
ちょいとパイロンにさわっただけの減点ではあるのだが、実はそれ以上にろくでもない走りをしていた。

まったく倒しこめず、バランスも悪く練習成果も発揮できていなかった。
正直、「5点で済んだのはラッキー」だったのである。

見たところ今年も同じパイロン幅コース幅である。
しかし、下見すればするほど、「これ行けないわけないやろ」という気になってくる。
問題はいきなりのバイクの癖を瞬時に読み取れるかどうかである。

一本橋
何度見ても、北は北海道から南は沖縄まで同サイズである(笑)
しかし、なぜ全国大会の一本橋はこんなに短く見えるのだろうか???

傾斜地
雨で危険なため中止となってしまった。
傾斜地に自信のあった私は正直がっかりである。

ってことで、どこにも失敗する要素はないことを確認できた。
今年の私のテーマ通り、全国大会をなめきった下見である(笑)




《初日競技》

いよいよ開会式の後、競技開始である。

福岡県の高校生クラス傾斜走行を応援する。
しかし、福岡の前の選手がゴール前で転倒!
こういうのってモチベーションが著しく低下する。

福岡代表、スタート地点で転倒者をガン見!「見るなー」と声をかける。
転倒者を見るとあせったり緊張したりするのである。
落ち着いていけ!

福岡スタート!
いつも通り落ち着いた走りで無難にゴール!

よしっ!

スラロームもコーナーリングもタイムこそ切れないものの大きなミスなく終了。


いいねぇ初出場とは思えない。



ってことでほどなく私のDブロックのスタートである。
競技車両を譲りうけて、まずはバイクの調整だ。

車両は、クラッチ、ブレーキ、ミラーのみ調整OKであり。他の部分は触ると失格?となる。

調整はその場で行い、調整後の試走はできない。

このためばっちり合わせたつもりでも、走り出すと「いかん!クラッチが近い!」とかけっこうパニックになるのである。

しかし今回、私はクラッチ調整の練習をこっそりしっかり何度も何度もやってきている。

薬指をはさんだ状態で半クラッチにして、うんうんこのくらいだ。
※全国大会に行かれる方はこの調整の練習をたっぷりしておいたほうがいいですよ!当日パニックになる可能性ありです。

いつもの通りに調整し、半クラで具合を見て、「よしOK!」

いままでになくまったく緊張していない。むしろ走るのが楽しみだ!



スタート位置についてコースを一通り目で追いかける。

「要するにミスしなきゃいいんだよね?」

そんな気持ちでおさらいする。



審判員から「準備よろしいですか?」と声がかかった。

私の心臓アイドリングが若干上がり、脳に酸素を過剰に送り始める。
体中のバランスセンサー・加速センサーがフルレンジでスタート!
瞳孔が開きまわりの景色がハイビジョンで脳に送られる。
TAKA2の戦闘モード完了!

「はい、準備OKです」
審判員は目の前に旗をかざし、勢い良く下げると同時に「スタート」の掛け声!

今年の大会が始まった!




わざとゆっくりと後方を確認し、クラッチミート!思ったとおりの半クラでじわりとバイクを進める。
「よし!OKだ、もらった」

タイヤのグリップを奪うための横からのシャワーを無視して右いっぱいにバイクを寄せる。
シャワーの水がエンジンにかかり「しゅーしゅー」と水蒸気が立ち上がる。

まず一つ目の左ターン。ここでバイクの調子をつかんでおかないといけない。

体内バランスセンサー120%でまっすぐバイクをたてたまま左フルロック!
ブレーキをひきづったままクラッチをあてると・・・

いかん!

ハンドルを左に切るとクラッチが遠くなる!もーちゃんと整備しろよー
んで、半クラはどこだ?

さぐりあててゆっくりと左にターン。ここでパイロン位置をもういちど確認。

やっぱり広い!バランスさえ崩さなければぜんぜん問題ない。

ゆっくりターンを完了し、一番の難関である左から右への切り替えに入る。
失敗する人はほとんどここでのミスである。

「右フルロックのときのクラッチの具合はどうだろう?」

ほとんど止まった状態でゆっくりハンドルを右に切る。

瞬間、審判員がかまえる。いつでも赤旗をあげる用意ができているのがわかる。

「残念!失敗しませんよ」
左ステップへの体重移動が終わり状態も右半身に。胸も右出口を向き、右手を外から握る。右ターンの体制完了!
半クラを探りながら必要ないくらいじっくりとターンを開始する。

「これならまっすぐつっきってもOkじゃないかな?」と回りを見渡してみるが、
ま、よけいなことはやめておこうとオーバースペックなライン取でゆっくりとゴール!


「はい、減点ゼロです」と審判員。「ありがとうございます」と答え、応援してくれている仲間にガッツポーズ!
よし、今回はすべてのセクションでガッツポーズを出すぞ!
はやる気持ちはすでに次のブロックスネークリベンジへ!


※エンジンから水蒸気がしゅーしゅー立ち上るが、無視!




二つ目はブロックスネークだ。
スタート位置に着くと審判員に見慣れた顔が。
挨拶でにやりと微笑むが、相手は無視(笑)

一通りコースを確認すると、多少振りが大きいか?
ま、大した問題ではない。

この一年、ブロックスネークのリベンジを待ち焦がれていた。
昨年失敗したときは、「御願いだからもう一度やらせてくれ!」という気持ちで一杯であった。
あれから一年、やっと もう一度チャレンジするチャンスがめぐってきた。
鈴鹿に戻って来たいという大きな理由の一つがここのリベンジだ。
見てろ、最高の走りを見せてやる!

「スタート」の合図で後方を確認し、ちょいゆっくりめに進入。
見えない後輪のラインを想像しながらまったく危なげなく体内時計10秒ぴたりで通過する。

「はい、9秒○○です」おお、いい線やねぇ。
減点ゼロで通過。
やっと一年間の呪縛から解放された気分である。いい気分だ。


※ブロックスネークリベンジ!


次はレムニー
ここも帳面消しだと自分に言い聞かせる。
ちょいと左に振り、すこし慎重すぎるくらいに進入する。
二つ目のパイロンを右ターンでかわしたところでコース枠と上のパイロンを再確認。
ありゃーあんまり慎重になりすぎたかな?
上のパイロンをぎりで通過し、あまあま余裕で下ってくる。

減点ゼロ!


※最近、レムニーは簡単だなぁ。



ってことでDコースは満点で終了!とりあえず四分の一は終わった。

戦闘モードを解除しつつ、意気揚々と待機場所へバイクを進めるのでした。














待機場所でタンクを撫でながらバイクにお礼を言って返却する。
そしてその足で一般Aの選手のもとへ。

「どうでした?」
TAKA2:「ばっちり、減点ゼロ!」
「うーんプレッシャーですね」(笑)


ってことで、千鳥セクションの対策を二人で練る。
しかし、思ったとおりに出来ないのが全国大会の怖いところなのである。

ほどなく一般A選手がアタック!
しかし、むずかしい!
やっぱりバイクの違い、しかも悪評高きZRX、しかも雨、んで、タイヤ賞味期限切れ!
この条件ではそうそう簡単にはクリアできないようだ。

一般Aの選手で、千鳥を成功している人って何人いたんだろう。
噂では結局成功者は一人だけだったとか・・・・



しばらく一般Aのライン取り等を見学したあと、いよいよ私のCブロックのスタートとなる。

バイクを受け取り、まずクラッチ調整。
が、しかし!ここでプチトラブル!
アジャスターを最弱にしてもクラッチがむっちゃ遠い!
調整不可能!すぐにクレームを出す。

「いかんいかん、焦るな!どうってことはない。時間がかかるなら審判員を待たせておけばいい!」
自分に何度も言い聞かせる。

結局審判員の方が工具を持ち出し、クラッチワイヤーを再調整。ことなきを得た。


調整後、右フルロックと左フルロックでの半クラッチの違いを確認して、スタートラインに並ぶ。

再度、コースを目で追うが、パイロン幅はやっぱり広め。いつもの練習より10cmくらい広いのでは?
コースの幅はいつも通りってとこだろうか?

ならばイン側のパイロンは気にしなくてよさそうだ。


「スタート!」
体内バランスセンサーを全開にして、ゆっくりと進入する。
ちょっと浅めに、しかししっかりとバイクをバンクさせる。
うん、安定している。けっこう楽なんじゃないか?

ラインに気をつけて次に右ターン、ゆっくりめの速度から倒しこんでパイロンイン。

バイクを起こしながらリアガードとパイロンの距離を目で確認すると・・・
うん、ちょいと起せばOKみたいなんでパイロンをよけるとまたすぐにバイクを倒しこみ。

ハンドルをしっかりフルロックして、きちんとバイクを倒しこんでさえいればけっこう簡単そうだ。


パイロンとの幅の余裕5cm、ラインとの余裕も5cm。いける!ってか、もらった!

思わず応援席の福岡サポータを目で探す。いかんいかん、よそ見はやめとこう。

結局危なげなく千鳥もクリアした。

昨年と同じ千鳥なのに今年はえらく簡単だ。
これもコーチによるしごきの成果だろう。(決していやみではなく本心でそう思います)


※本人的にはばっちり決まった千鳥走行



つぎに一本橋。
悩むことはない、全国一律規定の一本橋だ。いつもとおなじようにやればよい。
慎重に進入し、秒数を数えながらゆっくりと進む。
うーん、ちょいと数えるのが早いかな?でも25秒まで数えておけば大丈夫だろう。

ってことで、体内時計25秒ぴったりで一本橋から降り、ゴールへ。

「はい、20.5秒です」

え、25秒のまちがいじゃないっすか?

「いえ、20.5秒ですよ、とりあえずOKです」

やっばー、あぶないあぶない(汗)


※体内時計大幅に狂ってましたが、まあ、結果はオーライっつうことで。



バイクを返却に行くと、クラッチを調整してくれた審判員が心配して話しかけてくれる。
「どうでした?クラッチの具合はよかったですか?」

「はい!ばっちりです。おかげで減点なしでした。ありがとうございます」

審判員はよかったよかったと自分のことのように喜んでくれた。


ってことで、TAKA2の一日目の競技はすべて終了!
なんと減点ゼロの持点1000点、土着かずで折り返すことができた。


さて一日目終わって減点無しは一般Bでは7名。一般Aでは1名のみだ。
一般Bも明日は生き残りゲームとなりそうだ。
が、人の点数は気にするまい。私が心配したところで他県の点数が変わるわけでもない。
とりあえずミスせず練習の成果が出せればいい。
ってか、これが一番難しいんで、本当は他県のことなんか気にしてられないのだ。



んで、実は競技修了後にタバコを吸っていたところ、「すいません、福岡の選手の方ですよね」と声をかけられる。

見ると、60才前くらいの指導員のユニホームのおじさんが立っていた。
どっかの県の指導員と言われ、名前もフルネームで言われましたが忘れてしまいました(汗)。
たしか、千鳥走行のゴールのところにいた人(審判員)じゃなかったかな?

「はい、そうですが」と答えると、「今日の千鳥走行はすばらしかったですね!」と・・・

「減点ゼロの県はいくつかありましたが、進入が全く違います、福岡ほど余裕をもって通過したところはありません。すばらしい」と・・・
んで、「厳しい練習をされてるんでしょうね、どんな練習してるんですか?」と聞いてきた。

そこで、「うちのコーチは数年前の全国優勝者なんですが・・・この人がSなんですよー
パイロンを狭めたり、針金で特設リアガード作ったり、それで失敗すると腕立てなんです。
でも、計測で全員960越えたらコーチが腕立てって約束したらみんな燃えまして、なんと全員960点を越えましてね(笑)
コーチもしっかり腕立てやってましたよ」って教えてあげました。

その紳士は「それはすばらしい指導員ですねーうらやましいです」と・・・

コーチ!ほめられましたよ(笑)

そんなこんなで一日目の夜は深けていくのでした。



《二日目競技》

さて、二日目の朝である。
もちろん、時間は5時(笑)

昨日は酒量もそこそこに、食事もひかえめに終わらせたため体調は万全である。
荷物の片付け(部屋を明け渡す必要があるため事前準備)を終え、15分くらいにロビーに向かう。

相変わらず雨が降っている。龍神さまも早起きだ(笑)

早速コースに向かい、入念に下見をする。


雨のコース・・・


今日のコースはスピード系のBブロック、そして法規とブレーキのAブロックである。
昨日は「できるかできないか」のデジタルチックな競技であったが、今日は地味に点数を引かれる競技である。

雨は相変わらず降り止む気配は無い。
ウエットのイコールコンデションでの戦いだ。

さて、本日のアタック順にコースをチェックしてみよう。


※コーチとともにコース攻略の打ち合わせ



Bコース
・スラローム(傾斜走行)
いつものごとくちょこまかとターンの忙しいコースではあるが、コース幅はかなり広め。
「ラインはご自由に」ってな感じである。
それだけラインの読みでタイムが大きく変わるということだろう。
しかしS字だけはコース幅をかなり狭く設定している。
といってもいつもの練習レベルの幅である。

すなわち、ライン読みと、それをきちんとトレースできる能力がかなり必要になりそうである。
もちろん、ライディングそのものの技術が必要であることは言うまでも無い。

スタート位置から歩いてみる。

コースがきわめて分かりにくい。

いつもなら白テープできちんとラインを書いてくれているので目標がとりやすいのだが、
今回は雨でテープが使用できないため、パイロンとマーカーだけでコースを作っている。
これが、赤いパイロン乱立となるため、一目でコースが分かりにくいのである。

見たところ、フルロックターンは一箇所のみ、その他はスピードを乗せて弧を描いて走るのが理想っぽいと思える。

たぶん、こういうシチュエーションは「ジム屋さん」が得意なんだろうなぁ
そう思いながらスリップダウンと接地の少なそうなラインを頭に叩き込んだ。


・コンビネーションスラローム
直パイロンと、直パイから一つ目の振りに入るところが広い!
しかし、振りの二本目からはいつもの幅である。
こりゃー突っ込み過ぎないようにしないといけない。
それと相変わらずの雨、万が一にもスリップ、接地なんてことがないようにちびっとだけ抑え気味に走ろうと考えた。

・コーナーリング
Rが広めじゃないかとの話があったが、たしかに広めである。
設定タイムは3.3秒だし、行けないことはないんじゃないかとも見えるが、
タイムオーバーしても0.5秒オーバーまでは5点減点なんで、ここに入ればOKってことで、このセクションも無理しないことに決定。

Aコース
・法規走行
昨年のこともあり、頭の中には完全にコースが入っている。
昨年の5点減点の箇所も分かっているんで、ここは満点だろう。
ボンミスだけ気をつければOKだ。

・ブレーキング
雨のため、4mも停止距離が延長された。
練習では雨でも12m停止練習をしているので、19mの停止距離あれば70km/hでも止まれそうだ。
しかし、昨年はここで焦ってばかなミスをしている。
今年はばっちりと決めてやる!


ということで、特別難しいものではない。むしろ他県選手とのタイムの戦いである。
しかし、他県選手が早かろうが遅かろうが、私は自分の実力で走る以外方法もない。
あとは、他県選手がミスしてくれるのを待つのみである(笑)

泣いても笑ってもあと数時間ですべてのけりがつく。
そのときに私はどんな顔しているのか。

土砂降りの空を見上げ、「龍神さま、よろしく御願いしますね」と祈ってみる。









朝食の後、いよいよ二日目の戦いがスタートする。

バイクを借用し、クラッチブレーキを調整してBブロックスタート地点に着く。

場内放送では、私の出走の知らせと、コメントを放送しているはずなのだが、耳には入ってこない。

ゆっくりとスラロームコースのスタート位置へバイクを進めるといやがおうにも気分が盛り上がる。
しかし決して緊張しているわけではない。

小雨の中、応援してくれる仲間に軽くアイコンタクト。

スタート位置に付け、ひととおりコースを目で追う。最終確認だ。

「よし、体はあまり入れず、ニーグリップをしっかりしてブレーキング勝負の組み立てで行こう!」
作戦も決まった。


「準備はよろしいですか?」審判員が問いかける。
体内センサーすべて全開!瞳孔が開き脈拍が速くなる。
これからの二十数秒間に集中できる準備完了!

「はい、OKです!」返事と同時に体を低く構える。


目の前にフラッグが下げられ、「用意・スタート」
後方を確認し、アクセルを煽ったのち一気に飛び出す!二日目の開始だ!

パワーを控えめにできるだけ弧を描くように走る。
んん〜やはりS字は狭い。ここは無理せず流す。
ほかのコーナーは近道したいのをぐっと我慢して大きく入る。ブレーキングはできるだけ遅くやわらかく。

「ゴール!」

タイムはっ!

24秒台。ここで10点減点。

感想としては「遅いっ!」である。もう数回走れば2秒は縮まる。
しかし、このコンデションで一発勝負の全国大会。
今の自分ではこれが目一杯のタイムだろう。


※遅遅のスラローム走行



つぎにコンビネーションスラローム。
ここはパイロン幅がいままで走ったことの無い配置でもあるので、すこし慎重に走る。

スタート!
やはりリズムがつかめない。
調子が上がる前にゴール!
タイムは20秒台。ここでも5点減点。
でも、こんなものである。
練習のように走れないのは当然であり、大きなミスをしなかっただけでも大成功だ。


※いくらなんでも大きく回りすぎですね(汗)


次はコーナーリング。

事前に見たところによると、3.3秒台を出している選手は皆無である。
ほとんどは3秒後半のタイムだ。

やっぱりここはかなり厳しいのだろう。5点減点覚悟であまり無理はやめよう。

スタートすると、やっぱりRが大きい。
しかし、そこそこいい感じで走れて、「ひょっとしたら入った(3.3秒)か?」と思ったが、結果は3.6秒である。
ある意味作戦通りだ(笑)

きびしい、限界走行とはいわないが、昨年のRであれば3.0秒ペースで走ったつもりだが・・・


※コーナーリング


ここは誰も規定タイムは出せないだろうと思いつつ、Bブロックは終了した。


Bブロックの感想としては、たしかにあと数回走れば2秒くらいはすぐに縮まるだろう。
練習での最高の走りとは程遠いものだ。
しかし、私としては十分満足のいく走りであったと言いたい。
「十分にやり遂げた。これ以上は無い!」
この満足でBブロックを終了した。

さて、Bブロックの点数はマイナス20点である。
法規走行とブレーキングは満点の予定(汗)であるので、皮算用では総合980点ということだ。
これはけっこう期待できる点数とのこと。
私以上に回りがこのへんを気にし始めた(笑)
ただし、さめたコーチはこの限りではなかったが(爆)







さて、いよいよ最後のブロックであるAブロックだ。
「んじゃ行ってきます」とわざと気のない挨拶。みんなも「はーい、行っといでー」と軽く受け流してくれる。

バイクを受け取り、「あと二つだから御願いね!」とタンクをなでなでする。

まずは法規走行。イメージトレーニングでは多分50回くらいは完走している。
イメージ通りに走れば心配はない。

走り出すと雨脚が強くなる。メガネに水滴がつくが大したことではない。

県大会よりも少し遅めに、しっかりと動作をアピールして終了。
よし、問題なしだ!


※法規走行


そのまま次はブレーキング競技に入る。

ここのスタートの審判員は緊張を取るためだろう、いろいろと待ち時間に話しかけてくれる。
「今のところ点数はどうですか?」と・・・
「20点減点ですので、上出来ですね」と答える。

「おお、そりゃすごい。これで最後ですから気をぬかないようにね。」と・・・・
そこで去年の失態の話をすると、「ああーでも今年はきっと違いますよ」とはげましてくれた。


そんな話をしているとコースがやっとクリアになる。

「じゃ、そろそろ行きますか?」
「はい、御願いします!」

「スタート!」

前回の二の舞をふまないようにローで一気に加速!
「うぉーん!」
リアタイヤがパワーに負けスピン!、バイクが右に流れる。
しかし、大した問題ではない、ニーグリップを強めにして、それでもアクセルは戻さない。

二速に上げ60kmをメータで確認して前方を見ると・・・

うげ!まだブレーキポイントは先の先だ!

しかし、ここでアクセルは緩めたくない。

コンコンと4速にギアを上げ、そのまま軽く流す。
明らかに早すぎるが、まあ、70km以内なら楽勝で止まるだろう。

ブレーキポイントを十分に過ぎたところでアクセルを戻し、フロントに加重が乗ったところでフロントブレーキのみをかける。

「ぐぐぐっ」あっけなくバイクが止まる。

距離はまだ3m近く余裕がある。

「はい、58kmですね」と審判員から声をかけられる。

TAKA2:「いくらなんでも早すぎですかねぇ」
審判:「まあ、そうですが、止まれりゃあそれでいいです」とのこと。

減点項目なし!これで競技終了だ!


ここまで全工程終了し、マイナス20点。あと法規は最後まで点数がわからないが、特に失敗もないので満点だろうとたかをくくる。






《結果発表》

お弁当タイムのあと式典(パレード)を行い、結果発表・閉会式へ向かう。
空を見ると雨は上がっている。

「あれ?龍神さまは先に帰っちゃったかな?」



席に着くと、冗談で、「たかさん、ステージにはどっちから出ますか(笑)」と・・・
「いや、ないない!」と答えると、「そうでもないかもですよー」と・・・

しかし、私はなぜか「多分一桁台はまちがいないと思うけど、まあ5位以内はないなぁ」と思ってた。
特に明確な失敗があったわけではないのだが、私がステージに上がるなんてありえないことだと漠然と思っていた。
「きっと早い人がいっぱいいますよ」



さて発表です。
発表は3位、2位、1位の順で行われます。
3位のときは「もしかしたら」という期待もよぎりましたが、2位、1位の発表のときはどきどきもまったくなし。気分は入賞の発表待ちだ。

その後、4位から8位までの入賞者を順に発表となる。

6位、福岡県・TAKA2選手!

立上りぺこりとお辞儀をして、座りながら「まあ、こんなもんでしょう」と誰ともなしにつぶやいた。。
感想としては、「ああ、やっぱり私なんかより早くて上手い人は沢山いるんだなぁ。あたりまえか」である。




さて、閉会式も終わり、監督に入賞者と団体戦の成績が配られる。

980点だと思っている私は「上位者は何点だったんだろう」これが興味深々だ。


開いて見てみると・・・・

ん?一位・・・980点??
って、6位まで同点なん??

あわてて自分の点数をチェック!


ありゃ、法規走行で10点減点?なんで?


やっちまったぁ!

しかし、冷静に見てみると、ベスト10はみなワンミスだけで優勝を逃している。

これが全国大会!
これが私の実力!


なのである。



閉会式が終わり外に出てみる。
雲の切れ間から青空が見えてきた。


「そこまでは手伝わないよ、最後は自分で勝ち取りなさい」
龍神の後姿が見えたような気がした。

さ、梅雨もあけてこれから暑い夏が来るぞ!



《大会を終えて》

さて、今回の全国大会。特練のときから今までのピーカン熱中症練習と違い、雨ばかりの涼しい練習でした。
ってことで、休憩は少なめでがんがん行ったため、いつもより筋肉痛にがひどかったです。

が、これがかえってよかったですね。本番の雨対策になったと思います。


また、今回は独自の秘密特訓もやりました。

効果がいまいち不安だったんで、おおっぴらには言っていないんですが結果的によかったっぽいので公開しちゃいます。


@メンタル特訓
手が震えるほどの緊張から5秒以内に平常心に戻る。また平常心から緊張へ切り替え。の練習を一年間!やり続けました。
これはレポートの中でも紹介してますが、スタート位置までまったくの平常心で、スタート前に戦闘状態に精神状態を追い込み、
競技終了とともにまた平常に戻るというところでも現れています。
完璧ではありませんがかなり出来たと思っています。


Aいろんな調整での練習
3週目の練習からハンドルの高さを毎回変えて練習しました。高くしたり低くしたりですね。
また、クラッチとブレーキの調整も近めにしたり遠めにしたり多少違うセッティングでもOKなように練習しました。


Bハンドル切れ角の制限
4週目にはハンドルストッパーに針金を巻いて、切れ角を少なくして練習しました。
これで千鳥やスキットをクリアすることにより、本番では「ノーマル切れ角でいけないはずがない」との自信が付きました。


Dクラッチ、ブレーキ調整の練習
これは特練のない平日にやっていたんですが、本番では「ちゃっちゃ」とクラッチとブレーキの調整をしなければいけません。
これってけっこう難しいんですよ。
緊張してると「こんなもんでいいや!」って適当にやってしまって、アタックで慌てる。
んで、「バイクが全然違う!だから失敗」なんてことになっちゃいます。
ってことで、一旦クラッチ、ブレーキの遊びを最小にしたあと、バイクを動かさない状態で調整しなおし、それが正しいか走ってチェック!
ってのを自宅で練習。
特練では計測前にはいったん調整をくずして再調整、そしてアタックってのをやりました。





また、今回から千鳥をスタンディングに変更しました。
いままでは着座でアタックしていましたが、二週目からスタンディングに変更。
こちらのほうがしっかり倒しこめ、最小半径は小さくなります。
が、欠点としてはラインのトレースが難しくなるのと、バランスを崩したときにリカバリーが効かないことです。
二週目からスタンディング一本の練習に変更。最終日の残り30分でなにかをつかみ、本番でやっと完成というなんともギリな行程でした。







今回もマイミクさんのご好意によりバイクをお借りすることができました。
特練の内容を知っていれば、自分のバイクを喜んで提供する人なんかいません。
なんのメリットもないのに、二つ返事で貸してくれたマイミクさんに熱烈感謝です。
ありがとうございます。

また、ノーマルシートを貸してくれたバイク仲間さん。このシートがなければ全国大会はどうなっていたかわかりません。
貸して頂いてありがとうございます。

特練でおいたくってくれた各クラスのメンバー。
あなたたちのおかげで気合と悲壮感をもって練習に励むことができました。ありがとうございます。

そして、鬼課題で腕立て伏せを科してくれたコーチのみなさん、そのおかげで練習の成果を出すことができました。
ありがとうございます。

ずっと飲み物や機材準備、荷物運びまでしていただいたサポート隊のみなさん。
おかげで安心して練習・大会に集中できました。ありがとうございます。

最後にいつも声援を送ってくれて、鈴鹿に「がんばれエネルギー」を送り続けてくれた仲間たち。
ありがとうございます。

また、来年にむけてカウントダウンがスタートしました。
これからもご支援よろしく御願いします。